オトナの社会科見学〜印刷工場に行ってきました!#2


 



さてさて、刷る現場見学に引き続いて、特色インクの現場におじゃましてきました。

さっきの印刷機はCシアンMマゼンダYイエローKブラックの4色のインクをそれぞれ何%か組み合わせて印刷していたのですが(家庭用プリンターも大抵こんな感じ)、ダイレクトに「この色」とインクを指定するのを特色と言います。

ここでわたし、特色といったらDICかPANTONEしか扱ったことがなく、そんなメジャーなインクだったら、DIC154とか書かれた缶詰があって、それを使って印刷してるのだと思ってました。でも現場にあったのは、ぜんぜん違う缶詰でした。

 



「えっ!! 『ブルーナ にんじん』!? いきなりそれオンリー!?」

 



公文グリーンとか、岩波文庫浅葱、とかそんなんばっかり。

そうかあ。そういう世界だったんだ。

「ぴえこピンク」とか「ライオンのたてがみ」とかいう缶詰を妄想してみる…(笑)。

 



インク作りは大変な作業なので、過去に作った書籍の特色がこうして保管されていました。精興社さんのインクの在庫はかなり豊富で、震災後も不足に困らなかったそうです。

 



さて調合の方法について、解説していただきました。手に持っているのが私たちも普段お世話になっているDICの色見本です(これがコート紙だけで刷られているので上質系に当て込む時結構意味なかったりする、というお話もしていて「そうそう!」と思いました。色見本の世界はこの情報化時代に全く進化してなくてどうなのと思ってます……)。お客様から指定のあった見本チップを右上の紫のガッチャンコ機械で読み取ます。そうすると一瞬で右下のパソコンに解析結果が出て「あのインクが何%で…」と教えてくれ、それを参照して調合に入ります。

 



うおーーーーーー!!!練ってる!!!練ってる!!!!

見たかった調合現場だー。こういう風にやってるんだー。

ここで面白いなーと思ったのは、最新の技術で解析しつつも、最終的にはこういう職人の腕で仕上げているところです。「インク一滴だけで全然変わってきます」それはやっぱり機械じゃだせない味なのかもなー。

 



調合中、なんども実際の紙にインクを染みこませて確認します。色んな用紙の切れ端がいっぱい置いてありました。ゴミ箱にもたくさん。紙見てるだけで幸せな人、ここに来るといいよー。

 



やっぱり職人の「目」で確認します。

#1のエントリーにも書きましたが、職員の方の真っすぐな説明や、真剣に向かっている姿を見て、いろいろ考えさせられました。いつも「納期が」「予算が」「まだ駆け出しだし」みたいなことにとらわれていて、自分のイメージをしっかり伝えることもせず、妥協してばかりだったなあと。1回や2回という限られた色校正でも、もっと出来ることがあったんじゃないかなあと。でなければこんなに必死でお客さんの要望を再現しようとしている人達に申し訳ないなあと。

ただこんな風に何度も繰り返し本紙と本インクで試すことができるのって、本当に贅沢なことですよね。中国で生産するとそもそも紙の色が日本の白と違っていたり!一度でいいから納得いくまで試してみたいなあ。

 



こちらは昔のフィルム(版のようなもの)を保管しているところ。

精興社さんの見学、本当に面白かったです。誰でも知ってる「ぐりとぐら」や「おおきなかぶ」を何十年も刷り続けている現場ならではのアレコレを拝見できました。絵本というのは人の心に残る繊細なもの、長きにわたって引き継がれていくものだけに、緻密な作業が必要で、だからこそ生まれる職人としての誇りがあるんですね。社長さんから現場の方まで、どの方も活き活きと働いて、平易な言葉で熱く印刷技術について語ってくれました。

初版を再現するというこだわりについては「子どもに買ったお母さんから、自分が読んだ時はこんなイメージじゃなかった」という意見を本当にいただいたりするからだそうです。

使い捨てじゃない物を作っているというのは、クリエイターとしてとても士気が高まる現場じゃないかなあ。うらやましい!ここで働きたい!(そういえばつなぎを着た女性職人は居なかったな)

その後は神田の事業所に寄り、版下作成の現場を見学しました。Photoshopで最新かつ細心の調整をして、そのデータを職人さんが手で仕上げていく。つくづく面白いです。

私はアウトプットの末端に居るのが好きです。販売だったらお客さんの顔が見える売り子とか、タイトル戦だったらユーザーに近い中継記者とか。

デザイナーをやっていて何が嬉しいかといえば、原稿仕上げて校正かけて色々やって、最終的に自分の手元で送り出す、最後の姿を確認できるところ。

でも印刷現場はもっともっと末端だよなあ。最後に立ち会えるよなあ。予算だとか営業だとか考えずに、モノを作ることだけに集中できる。あれ?私がやりたいのはこっちなのか?

将来つなぎ着て働いてたらすみません(笑)。

精興社さん見学ツアー、デザイナーの@yamo74さんもレポートしています。わかりやすい!プロの目のレポートはこちらから。→印刷が好きです・精興社見学Vol.2

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